医薬品不足の根本原因を特定するための利害関係者の取り組み
欧州製薬団体連合会(EFPIA)は最近、欧州における医薬品供給不足を最小化するための政策提案を発表した。特に、医薬品不足の根本原因および要因に関する追加的な知見として偽造医薬品指令に基づいて設置されたリポジトリ(医薬品の国内流通情報を一元管理する各国のデータベース(訳者追記))の使用を呼びかける。
さらに、EFPIA、欧州ジェネリック医薬品協会(Medicines for Europe)その他の業界団体のサプライチェーン関係者は、最近、医薬品不足の根本原因に対処する論文を発表した。この論文は、さまざまな原因を特定している。例えば、規制関連の根本原因として特定の国内向け梱包要件や、製造および品質関連の根本原因として製造能力やGMP問題などが含まれる。そして、以下の提案をする。:
1. EUレベルでの医薬品不足の調整と監視、およびそこでの「不足のリスク」の明確な定義付け
2. 基礎的で低価格の医薬品が市場に残ることを保証するための規制上のインセンティヴの制定
3. 仮に医薬品不足が確認された場合に異なる包装単位や複数国向け包装を許可することなどの規制の自由度の許容、および医薬品不足軽減のため規制の効率性の改善
4. 予測可能で持続可能な価格設定および保険償還環境の形での市場の安定性および持続可能性の確保
EMA報告書案
EMA報告書案は、初めて総合的なMAH GMP責任を1つの包括的な文書にまとめたものだ。重要な医薬品の供給維持に関する章において、EMAは、2001/83/EC指令第81条に基づくMAHの「公共サービス義務」について繰り返し述べ、「問題となる加盟国の患者の需要が満たされるよう、薬局および医薬品を供給する権限を与えられた人に対して、十分かつ継続的な医薬品の供給を確実にする」必要があるとした。EMAは、MAHには、供給についての制約を管轄当局に報告する責任があり、それゆえ、MAHが自社の供給元に潜在的な供給問題について適時に報告させることを確実にしなければならないと念押しした。MAHは、「潜在的な供給問題について自社と供給元との間の情報交換の仕組みを確実化することについて合意し、技術協定書に明示に文書化しておかなければならない。」
EMA報告書案は、供給中断の考えられる理由として、特に、製造および流通活動のグローバル化に関連して非常に複雑化したサプライチェーン、ならびに企業間の販売承認の移管に関する杜撰な管理の結果、移管後に正しい製造工程を経た製品が得られなくなることなどを上げた。
EMA報告書案は、サプライチェーン管理へのアプローチにおけるMAHの積極的関与の重要性を強調し、MAHが製造、規制、サプライチェーン手順の詳細なリスク評価を実施し、これらの分野で特定された弱点に対処することを推奨する。
医薬品不足の防止を重要な優先事項とする
これらの進展は、医薬品不足の防止を2020年以降のEU政策の重要な優先事項とする、EMAウェブサイト上のおよびEUの関係規制当局による過去数週間のさまざまな機会での公式発表に結びつく。昨年の記事で紹介した規制当局指針に加え、EUの関係規制当局は、管轄当局間の情報共有を改善する努力を強化した。特に、ヒト用および動物用の承認薬の入手可能性に関するHeads of Medicines Agencies(HMA)およびEMAのタスクフォースは、単一窓口(SPOC)ネットワークを確立して、これを通じて加盟国、EMA、および欧州連合が重要な医薬品不足に関する情報を共有できるようにするための試行プログラムを実施している。第一段階として、試行プログラムは、SPOCネットワークの機能性および有用性をテストした。2020年、第二段階として、試行プログラムは、EU全体での協調行動に値する事例を特定する基準および患者に大きな影響を与える可能性のある事後の広報のネットワーク警報の基準をテストする予定である。
結論
過去数ヶ月間で、医薬品不足とその防止に焦点を当てたいくつかの重要な進展があった。MAHは、これらの進展が2020年以降に勢いを増し、EU関係規制当局が、医薬品の供給管理に関するMAH GMPの責任をより明確に定義し、より細かい注意を払うようになることを予期しなければならない。
したがって、MAHは、本書に記載した複数の進展をより細かく追跡し、自社の製造、規制およびサプライチェーン手順の詳細なリスク評価の実施を検討し、これらの分野で特定された弱点に対処しなければならない。