製造販売業者のための新たな指針
EU法に基づき、医薬品の製造販売業者には、患者のニーズが満たされるように医薬品の適切かつ継続的な供給を確保する義務があります。製造販売業者はまた、製品の市場に対する供給が停止する少なくとも2か月前に規制当局に通知すべきです。
製造販売業者による医薬品供給不足の検知及び通知に関する最近の指針(製造販売業者指針、こちらを参照。)は、これらの製造販売業者の義務を更に明確化しています。重要な第一歩として(そしてこれまでで初めて)、製造販売業者指針は、「医薬品不足」の語を、「国家的なレベルにおいて供給が需要を満たさない時に生じるもの」と定義し、過去に共通の定義がなかったことがEUにおける不足の検知及び管理に一貫性が欠けることにつながったことを認めました。
製造販売業者指針は、製造販売業者が一又は複数のEU加盟国に影響を与える(又は与えると予想される)全ての現在の、差し迫った又は予想される不足について、当該医薬品が有すると思われる臨床的重要性や代替的医薬品の入手可能性に関わらず、検知し報告する責任を負うことを明確化しています。製造販売業者指針は、規制上の問題、品質上の欠陥及び/又はその他の原因(GMP/GDPに関する問題、バッチの失敗及びリコールを含みます。)に起因して生じた又は生じることとなる全ての現在及び差し迫った医薬品不足を通知すべきとしています。
製造販売業者は、この義務を履行できるよう、自社の医薬品の需要供給状況を継続的にモニターし並びに自社のサプライチェーンに関与する受託製造業者及び卸売業者等の全ての事業者とオープンで継続的なコミュニケーションを保たなければなりません。特に、(1)製造プロセス(の一部)が単一の施設に依存している医薬品に関し又は(2)代替的医薬品が存在せず若しくは限定的にしか存在せず及び供給の中断が公衆衛生への潜在的リスクをもたらす場合には、製造販売業者には特段の注意が期待されます。
製造販売業者指針は、製造販売業者はいかなる医薬品不足もできる限り早期にかつ当該医薬品の市場に対する供給の中断の少なくとも2か月前には通知すべきことを強調しています。全ての製品について、当該医薬品不足の通知は、影響を受ける国の所管当局に対し行わなければなりません。欧州医薬品庁で認可されている製品については、医薬品不足の通知を各国当局だけではなく欧州医薬品庁に対しても行うべきです。製造販売業者指針は、報告用のテンプレートが該当国によって定められていない場合において(欧州医薬品庁及び当該国の所管当局に対する)通知に含まれるべきテンプレート(”Annex 1: Proposed template for shortage notification” こちらで入手可能。)を提供しています。製造販売業者指針は、通知の内容は「包括的かつ簡潔なものである一方でできる限り正確でかつ最新なもの」であるべきこと及び現存の又は新たな情報については入手でき次第提供すべきことを求めています。
所管当局のための新たな指針
製造販売業者はまた、医薬品の入手可能性に係る問題に関する所管当局による国民に対する情報公開についての新たな指針にも留意すべきです(”規制当局指針” こちらで入手可能)。この指針は、不足に関する状況について所管当局がどのような情報をいつ国民に対し公開できるかの概要を示すものです。
特に、規制当局指針は、所管当局は公開について選択基準を適用すべきでなく、自身の管轄域において生じる全ての医薬品不足について公開すべきとしています。これは、全ての認可された医薬品について、各国の規制当局が自身のウェブサイトで不足を公開することを意味します。また、欧州医薬品庁は、不足が複数の加盟国に影響を与えかつ欧州医薬品庁が医療従事者に対し勧告を行った場合には、当該不足を欧州医薬品庁のウェブサイトで公開することになります。
規制当局指針は、製造販売業者が不足を確認次第できる限り早期に以下の情報が公表されるべきとしています:(1)商品名、製造販売業者、有効成分等の医薬品に関する詳細、(2)医薬品不足期間及び医薬品不足の理由を含む医薬品不足に関する詳細、(3)必要に応じ医療従事者への助言並びに(4)医薬品不足の現状に関する最新の情報。
結語
新たな指針は、製造販売業者のために供給の管理及び不足の検知に関しEU法に基づく製造販売業者の義務を更に明確化するための並びに所管当局のために医薬品の入手可能性に関する問題についての公開の義務を更に明確化するための重要な第一歩です。
製造販売業者は、自身の供給及び潜在的な不足の管理に対する規制当局による審査がより厳しくなると予想すべきです。製造販売業者は、自社の供給管理及び医薬品不足検知プロセスを見直すべきであり、また、必要に応じ、これらのプロセスを新たな指針に沿ったものになるように更新すべきです。