Sidley Updates
連邦巡回控訴裁判所、特定の医薬品に関する政府の貿易協定法基準の解釈を否定

製造業者への影響
Acetris社訴訟での裁判所の判断は、先例から本質的な乖離を示すものだが、現段階での影響の全容はまだ明確ではない。しかし、製造業者にとっていくつかの留意点がある。
まず初めに、当面、米国退役軍人局(VA)は、指定国以外のAPIを用いて製造された米国製医薬品を調達できることとなった。以前であれば、VAには禁止されていると考えられていたものである。したがって、該当する製造業者は、VAに対して、製品を販売する新しい機会を得たことになる。
第二に、Acetris社訴訟の裁判所が実施した米国製最終製品の分析が、VAまたは他の米国政府機関による調達か否かにかかわらず、医療機器やその他の製造物などの非医薬品に適用されるのかは明確ではない。したがって、該当する製造業者は、VAまたは他の米国政府機関に製品を販売する新しい機会を得たことになる。
第三に、同裁判所の判決は、米国で最終製品化されない医薬品の原産国決定に重大な不確実性をもたらした。たとえば、この判断は、医薬品の原産国基準が、政府が公表したほど明確ではないという証拠となる。したがって、医薬品の原産国を決定する際には、製造業者がAPIの原産国だけでなく、製造プロセスの他の側面を考慮することが適切な場合もある。
第四に、政府が裁判所の法律解釈に「不満」を抱くのであれば、連邦調達規則(FAR)の修正を検討すべきである-という裁判所の説示に照らして、医薬品製造業者およびより広く製造業者は、連邦調達規則の貿易協定法(TAA)条項または「米国製最終製品」の定義の改正に注意する必要がある。
最後に、製造業者は、政府が連邦巡回区控訴審裁判所の大法廷での審理を求めるか、または最高裁判所に上告して、この判決によってもたらされる不確実性を改善しようとする可能性があることに注意しておかなければならない。
判決理由
裁判所は、TAAの下で「インドで製造されたAPIを使用して米国で錠剤に製剤化されるAcetris社製品は、調達が禁止されている「インド製品」にあたるか」を特に検討した。裁判所は、Acetris社の錠剤の調達がTAAまたはFARによって禁止されているかを分析した結果、禁止されていないと結論付け、その過程で「VAによるTAAおよびFARの解釈は誤りである」と認定した。
裁判所はまず、TAAが調達を禁止しているかを検討した。裁判所は、TAAは「インドのような外国の「製品」」の調達を禁止していると述べた。裁判所は、APIの製造国が医薬品の原産国を決定するものであると判断した最高裁判所または巡回裁判所の判例を政府が示すことができなかったことから、APIが原産国を決定するという政府の主張を否定した。代わりに、裁判所は、米国以外の「国の製品」であるためには、TAAは(1)「すべてが、当該国の製造物」である、または、(2)「その全部または一部が別の国からの原材料で構成される物品の場合…変換される前の物質とは全く別個の名称、性質、または用途を持った商品に実質的に変換されている物」であることを要求すると言う(19 USC§2518(4)(B))。そのうえで、裁判所は、インドが当該錠剤の原産国であるかどうかを判断し、TAAの条件(1)については、製造の最終段階がインドではなく米国で行われるため、当てはまらないとした。その後、裁判所は、TAAの条件(2)について、錠剤の原材料が、インド国内で当該錠剤に「実質的に変換」されていないため、当てはまらないとした。したがって、当該錠剤は、TAAの下でインド製品ではないと結論付けた。
特筆すべきは、裁判所の判断には、VAまたは他の機関が、TAAの下で何が実質的な変換を構成するのかについて、どのように決定すべきかのガイダンスを提供していないことだ。本件の司法判断適合性についての判断において、裁判所は、CBPについて、「調達法の法解釈独自の問題であって、FARについて意見を述べる権限を持たない」機関であるとし、その歴史的役割を考慮要素から排除した。この見解は、FARがTAAとは異なる基準を使用しているという裁判所の認定と一致しているが、FARテストの条件(2)の下で、実質的な変換が行われたかどうかを判断するために、政府機関が広くCBPの基準を利用してきたことを認定していない。さらに、脚注で、裁判所は、Acetris社の米国内での製造工程が実質的な変換を構成するのに十分と言えるかという問題には本判決は及ばないことを明示的に指摘している。
次に、裁判所は、FARが当該調達を禁止しているかを検討し、禁止していないと認めた。重要なことに、この事件の結果および他の事実シナリオへのこの判決の適用に関して、裁判所は、米国製最終製品に関する限り、FAR§52.225-5は、TAAの原産国テストを採用していないことを強調した。むしろ、FARは、契約者に「米国製…最終製品のみ」を供給するように求め、ここで「米国内で採掘、生産または製造された物品または 米国内で実質的に変換された物品」と定義している(FAR§25.003)(強調 は筆者による)。
FARの米国製最終製品の定義には、製品は原産国で「すべてが」製造されなければならないという要件はない。したがって、米国以外で製造された原材料を使用して米国内で製造された製品は、米国内で製造されたと見なされる可能性がある。この区別は、規制の歴史が確認している。裁判所は、「FAR条項の素直な解釈に基づき、Acetris社の錠剤は「米国内で製造されている」ため、米国製最終製品として適格である」と結論付けた。この結論に至る過程で、裁判所は、「「実質的な変換」なしでは「製造」できない」のだから「製造」と「実質的な変換」は同じ意味を共有しているという政府の主張を否定した。裁判所は、政府が裁判所の法律解釈に「不満」を抱くのであれば、政府は「米国製最終製品」のFARの定義を修正すべきであるとした。
同時に、同裁判所の判決は、バイ・アメリカン法(Buy American Act, BAA)で使用される「国内最終製品」基準がTAAの米国製最終製品の定義に包摂されているという、連邦請求裁判所が採用したAcetris社の主張も暗に否定した。BAAの「国内最終製品」であるためには、製品は(1)米国内で製造され、かつ、(2)国内原材料費が全原材料費の50%を超える、または、製品が市販品(commercially available off-the-shelf, COTS)でなければならない(FAR§25.101(a))。
「国内最終製品」の定義に依拠した連邦請求裁判所の判決を否定したため、裁判所は、米国製最終製品に対し、意図しなかったかもしれない、さらに低く見える基準を設定したことになる。同判決の下では、米国製最終製品とされるのに必要な条件は、TAAの下で外国製品ではなく、かつ米国内で最終製品化を完了すればよいことになった。一方、BAA基準では、「国内最終製品」として認定されるためには、米国内で最終製品化することに加えて、原材料費テストまたはCOTSテストのいずれかを満たす必要がある。
判決の射程
本判決には、Acetris社特有の事実に拘束される性質があるため、米国内で最終製品化されない製品を製造する医薬品製造業者には限定的なガイダンスしか提供しない。Acetris社判決は、製品の最終化工程が米国内で実施される医薬品のみ検討している。製品の最終化工程が米国外で実施される製品についての原産国分析については、何らのガイダンスも与えない。FAR下では外国に適用される基準は米国内と異なるため、何が「米国製最終製品」を構成するかを決定するために使用される基準を米国外での最終製品化に準用できるのかどうかは、実際に問題となる。
特に、FAR§52.225-5は、米国製最終製品および指定国最終製品の調達を許可している。指定国最終製品には、世界貿易機関(WTO)政府調達協定の最終製品、カリブ海沿岸国の最終製品、自由貿易協定国の最終製品、および後発開発途上国の最終製品が含まれる。これらはすべて、当該国で「すべてが 栽培、生産または製造」された物品と定義されている(強調 は筆者による)。上記で説明したように、米国製最終製品の定義は、最終製品が「米国内で採掘、生産または製造された物品」であることのみを要件とする。したがって、「米国製最終製品」であるためには、製造の一部が米国内でなされれば十分である一方、「指定国最終製品」であるためには、品目が指定国「内ですべて製造」されなければならない。
Attorney Advertising—Sidley Austin LLP is a global law firm. Our addresses and contact information can be found at www.sidley.com/en/locations/offices.
Sidley provides this information as a service to clients and other friends for educational purposes only. It should not be construed or relied on as legal advice or to create a lawyer-client relationship. Readers should not act upon this information without seeking advice from professional advisers. Sidley and Sidley Austin refer to Sidley Austin LLP and affiliated partnerships as explained at www.sidley.com/disclaimer.
© Sidley Austin LLP
Contacts
Capabilities
- Stay Up To DateSubscribe to Sidley Publications
- Follow Sidley on Social MediaSocial Media Directory
