英国広告基準協議会(“ASA”)は、2019年12月18日に公表した4つの個別の決定により、British American Tobacco UK Ltd(BAT)、Ana Vape Lab Ltd.、Attitude VapesおよびGlobal Vaping Group Ltd.(Mylo Vape UKとして営業)に対して、医薬品として認可されていないニコチン含有電子タバコの写真を表示しマーケティングするInstagramの投稿は、同電子タバコの違法な直接的販促活動を構成するとした(つまり、医薬品ではなく消費者向け製品であるニコチン含有電子タバコであり、苦情を申し立てられた広告には医学的クレームは含まれていない。医学的クレームはこの記事の主題ではない)。本件は、広告慣行委員会(“CAP”)コード(UK Code of Non-broadcast Advertising, Sales Promotion and Direct Marketing)規則22.12および22.10に違反したものである。この結果、販売会社が、当該投稿が自社のアカウントのフォロワーのみに配布され、他の人からは見られないことを確実にするまで、純粋な事実に基づく主張を含む投稿も含めて、これらの製品を広告するすべての投稿がInstagramの公開アカウントに対し禁止された。
ASAは、無認可のニコチン含有電子タバコの4つの製造業者の公開Instagramページへの複数の投稿について、Action on Smoking and Health(ASH)、Campaign for Tobacco-Free Kids、Stopping Tobacco Organizations and Products(STOP)など、さまざまな組織から苦情を受領した。
これらのすべての企業が、自社の製品を使用したモデルの画像を投稿していた。またBATは、同社製品を使用したリリー・アレン(歌手)やオリビア・ジェイド・アトウッドなどセレブの画像、同社製品を使用したモデルの「ブーメラン」(無限ループ動画)およびラミ・マレック(俳優)のアカデミー賞ノミネーションやハウスオブホランド(ファッションブランド)を同社製品と紐づける投稿をしていた。
規制環境
タバコおよび関連製品規制2016に禁止規定を反映するCAPコード規則22.12は、新聞、雑誌、定期刊行物、またはオンラインメディアやその他の形式の電子メディアにおいて、無認可のニコチン含有電子タバコおよびその成分の販売促進に直接的または間接的に効果を有するマーケティングコミュニケーションにおける同製品の広告を禁止している。しかし、これらの製品に関する事実に基づく主張は、販売会社の自身のウェブサイト内および、ある特定の状況下で「販売会社の管理下にある無償のオンラインスペース」内においては認められている。CAPも拘束力を持たないガイダンスを公開し、原則として、この例外の射程をソーシャルメディア活動にまで拡大する可能性があると言及していた。
CAPコード規則22.10では、25歳未満の(またはそのように見える)モデルの電子タバコを吸引させての使用を禁止している。
ASAのアプローチ
これらの苦情に関して、ASAは主に以下の3つの(互いに関連する)問題を検討した;
- 当該投稿が無認可のニコチン含有電子タバコの直接的または間接的な販売促進を構成するか、
- Instagramの公開ページが、事実に基づく情報提供が認められている「販売会社の管理下にある無償のオンラインスペース」を構成するか、
- 当該投稿が事実に基づく情報提供の範囲を超えており、そのため、結局のところ当該例外にあたらない販売促進的コンテンツを構成するか 。
4つの決定すべてにおいて、ASAは、これらの企業が医薬品として認可されていないニコチンを含有する製品を販売していることを認定し、当該広告は無認可のニコチン含有電子タバコを直接的に販売促進するものであるとした。
ASAは、販売会社のウェブサイト内および販売会社の管理下にある無償のオンラインスペース内の広告では、事実に基づく主張は認められていることを確認し、またCAPのガイダンスが、原則として、この例外をソーシャルメディアでの事実に基づく主張にまで拡大する可能性があると言及していることも確認した。しかし、ASAは、Instagramの投稿が「当該アカウントをフォローすることをサインアップしたユーザーを超えて」配布される可能性があることから、Instagramの公開アカウントが製造業者自身のウェブサイトに類似しているという議論を棄却した。これは2つの理由に基づく。第1に、当該投稿に含まれるハッシュタグが、これらのハッシュタグをフォローしまたはクリックしたユーザーに配布され得ること。第2に、Instagramの公開アカウントからの投稿は、以前に類似した投稿を操作したことがあるユーザーのみとはいえ、不特定のユーザーの(コンテンツが自動的に生成される)Instagram Exploreページに表示され得ること。これらの2つの手法を通じて、消費者は販売会社からメッセージを受けとる事についての同意なくしてプッシュされたコンテンツを受信し得ることから、ASAは、このような投稿は小売業者の自身のウェブサイト上の投稿を積極的に検索することと同等ではないと判断した。したがって、当該製品の販売促進広告も事実に基づくコンテンツもいずれもInstagramでは許可されない。
ASAは、結局のところ、当該広告が事実に基づく情報提供の範囲を超えたコンテンツを含み、本質的に販売促進的であると判断した。「#vapelife」(Ama Vape)や「#LiquidsWithAttitude」(Attitude Vapes)などのハッシュタグの使用は、若い女性の画像やリリー・アレンやオリビア・ジェイド・アトウッドなどの有名人の画像の使用(BAT)と同様、販売促進的広告の表現であると考えられた。さらに、「ブーメラン」の使用は典型的で、本質的に販売促進的であると見なされた(BAT)。そのため、ASAは、BATが主張したような、当該広告が本質的に事実に基づくものであり、製品の特性に焦点を当て、製品に関する事実に基づく情報を一般に伝えることを目的としていたという議論を棄却した。
したがって、これらの広告はすべて、事実に基づく情報提供ではなく、本質的に販売促進的であるとの結論となった。いずれにせよ同決定は、Instagramは、本法律の目的に照らして「マーケティング担当者の管理下にある無料のスペース」とは認められないため、たとえ事実の記載のみを含む投稿であっても許されないと述べた。規則22.12違反と裁定された。
4つの判断すべてにおいて、ASAは、使用されたモデルが25歳未満であるかまたは25歳未満であるように見え、当該広告が公開された時点で当該モデルが25歳以上であったという証拠もないと認定した。これは規則22.10違反である。
4つのケースすべてにおいて、ASAは、苦情を受けた形式で当該広告が再び表示されてはならないと結論付けた。医薬品として認可されていないニコチン含有電子タバコとその成分を販売促進する直接的または間接的な効果を伴うマーケティングコミュニケーションは、販売会社が「自社のアカウントのフォローする人のみに配布され、他の人からは見られないことを確実にする措置を取らないかぎり」、今後、Instagramの公開アカウントから行うことができない。さらに、モデルが電子タバコを使用するまたは重要な役割を果たす場合には、25歳未満の(または25歳未満のように見える)モデルを起用してはならない。
コメント
これらの事例は、電子タバコ製造業者がInstagramを使用して一般に広告する方法について重要な説明を提供する。CAPコードは、オンラインメディアでの無認可ニコチン含有電子タバコの一般に対する販売促進を禁止していることは明らかであるが、販売会社の管理下にある無償のオンラインスペースでの事実に基づく情報提供の例外に関しては従来グレーエリアであった。ASAが、今回、Instagramの公開アカウントがこの例外に含まれないことを明確にしたことにより、販売促進的か事実に基づくコンテンツであるかに関わらず、同アカウントからの投稿は認められないことが明らかとなった。ASAはまた、(事実に基づくものではなく)本質的に販売促進的なコンテンツであるということの定義を厳しく適用することで、Instagramを販売促進用のツールとして使用することをさらに困難にした。したがって、電子タバコの製造業者は、自社の製品に関する情報を消費者に提供するだけであっても、Instagramの使用には慎重にならなければならない。