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コロナウイルスと契約紛争–グローバルサプライチェーンの混乱に起因する法的リスクを管理するための10のヒント

新型コロナウイルス感染症、COVID-19、が世界中に広がる中、世界保健機関(WHO)はそのグローバルなリスク評価を継続的に引き上げている。COVID-19の悲劇的な健康への影響に加えて、このウイルスは国際ビジネスに大きな悪影響を及ぼしており、多くの世界的なサプライチェーンを混乱させている。
COVID-19の影響を大きく受けた地域にある工場の閉鎖により、無数の供給契約が混乱を来している。ここ数週間、中国当局と商工会議所は中国企業に何千もの不可抗力証明書を発行した。ただし、COVID-19は、すべての契約およびあらゆる状況において有効な不可抗力を生じさせるわけではなく、契約および準拠法によって異なる状況に対する異なる要件を規定している。したがって、企業は関連する法的リスクを積極的に管理し、COVID-19によって生じた金銭的損失を最終的に負担すべき当事者はだれかを慎重に評価すべきである。
次の7つのヒントは、サプライチェーン問題に直面した場合の法的リスクの管理に役立つものだ。さらに付け加えた3つのヒントは、将来のより堅牢なサプライチェーンの枠組みを作るのに役立つ。これらのヒントはすべて、今後のSIDLEY Webinarで詳細に説明する予定だ。その間、緊急の問題については、SIDLEYの弁護士にご相談いただきたい。
COVID-19によって引き起こされる供給の混乱に直面して–今何をすべきか?
COVID-19は、さまざまな経路で貴社に影響を及ぼす可能性がある。貴社の製造は、政府の閉鎖や出社する従業員の減少によって影響を受ける可能性がある。または、貴社への供給元が出荷を中止し、貴社が商品を生産できなくなる場合があります。COVID-19の影響がどのようなものであれ、次のヒントはこのような状況の管理に役立つものだ。
1. 供給問題の性質の正確な特定と文書化
事態に関する最新の知識は、適切な経営判断に不可欠であり、このような事態の発生を証明する能力は、その後の法的手続きにおける成否を決定する可能性がある。
・ 貴社が直接影響を受ける場合: 貴社の供給が不可能である理由を確実に理解する。その理由は、行政命令による工場の閉鎖または検疫なのか、従業員の罹患なのか、従業員の恐怖による出社拒否なのか、またはその他の理由か?問題の性質を正確に特定することは極めて重要であり、貴社固有の問題の原因を証明する証拠の保全が必要だ。
・ 供給元の貴社への供給が止まった場合:原因不特定の不可抗力宣言を受け入れてはいけない。その代わり、供給元に対し、同社が正確にどのような影響を受けているのかについての詳細な情報を求めるべきである。関連情報を入手する前に、不可抗力宣言へのいかなる立場も取らないことが重要だ。
2. 貴社の契約およびその準拠法の下でのリスク分配の分析
すべての契約および準拠法が、当事者の管理外の予期せぬ出来事に基づく不可抗力条項を規定しているわけではない。不可抗力(および同様の法的抗弁)の射程と要件は、契約ごとに異なる。したがって、貴社の特定の状況に関する慎重な法的分析が不可欠あり、そのような法的分析は、当該供給の問題の個別的性質、貴社の契約の個別の条項およびその準拠法に依存する。供給元による不可抗力に直面し、その結果、貴社の顧客への供給が不可能となる場合は、各契約の下でリスク分配を個別に評価し、最適なリスク管理戦略を練る必要がある。
3. 言わなければならないことは言う、ただし、落とし穴に注意
特定の契約条項または準拠法によって、不可抗力事由の迅速な通知が必要となる場合があり、これを怠ると不可抗力の抗弁の障害となる。これらの通知要件がある場合には、上記の2点の評価を完了する前に、不可抗力宣言を発行する必要がある。供給元から不可抗力宣言を受領した場合は、貴社の法的立場を保護するために慎重に回答を作成し、もしその後貴社が顧客に対して不可抗力宣言を発行しなければならない場合には、供給元との将来の紛争において貴社に不利益となる可能性のある一切の言葉を避けておかなければならない。
4. 供給問題の克服への努力
契約および準拠法の多くは、貴社が不可抗力事由による結果を克服することが可能である場合には、不可抗力の抗弁を認めていない。代替品の供給コストが大幅に高騰することを回避するために、貴社が(ほとんどの準拠法では認められないが)事情変更条項を行使する権利がある場合でもない限り、不可抗力抗弁に頼ることは通常は出来ない。貴社が、無効であると思われる不可抗力宣言を受領した場合、貴社は、自身の損害を軽減する措置を講じる義務がある。供給の問題を克服するために取ったすべての努力を文書すべきであり、とりわけこれらの努力が奏功しなかった場合に重要である。
5. 供給可能な場合の割り当てに関する注意
生産量の減少により一部の顧客に対してしか供給ができない場合、その可能な供給量に割り当ては扱いにくい問題である。契約や準拠法に何らかの制約やガイダンスが含まれているかどうかを慎重に確認すべきである。優先顧客への供給を続けたまま、他の顧客に対しては不可抗力を宣言することは問題が多い。貴社が不可抗力宣言を受領した場合は、供給元が在庫をどのように割り当てるかを調べるべきである。
6. 契約紛争の積極的な管理による効率的解決
COVID-19関連のサプライチェーン問題に起因する損失を誰が負担すべきかについては多くの訴訟が発生するだろう。契約紛争を積極的に管理することは、それらを効率的かつ成功裏に解決する可能性を高める。協力的かつ合理的なやり方で供給元および顧客と交渉すること、これは紛争の回避または解決に向けた長い道のりである。同時に、訴訟となった場合のためにすべての必要な手段を取って貴社の法的および証拠的立場を保護し、貴社の契約の紛争解決条項を確認して、どの裁判所または仲裁が判断するのか、その判断者はこの状況をどのように評価すると考えられるかを確認する必要がある。SIDLEYは、早期の事案の評価によって、これら一連の段階をサポートすることができる。そして、貴社が、訴訟をするか和解を探るかの判断を手伝い、貴社の勝訴可能性を反映させた妥当な和解額の決定も支援する。
7. 不可抗力の終了
典型的には、不可抗力は一時的な防御として機能するが、事態を克服し供給が再開されるとすぐに解除する必要がある。その時点まで、多くの契約は、定期的な情報提供を義務付ける。必要な場合には、貴社の契約と準拠法が、一時的な履行の中断のみを許すのか、あるいは契約条項の変更または契約全部の解約の権利まで与えているか評価すべきである。
将来に向けて貴社のウイルス適応力を高める
SARS、MERS、鳥インフルエンザを経験し、COVID-19がこの種の世界的な健康危機の最後のものとなると考えるのは楽観的過ぎる。今は、将来の世界的なウイルス関連の問題を最小限に抑える対策を講じる良い機会だ。最も大切な3つのヒントを示す。
1. プランB(CおよびD)を持つ
現在、中国のCOVID-19の影響を受けた地域内の製造元1社にのみ依存している企業が最大の危機に直面している。適正サプライチェーン実務基準(good supply chain practice)は、異なる国と地域に複数の供給元を置くことを求めている。こうした実務は、 パンデミック、気候変動またはその他の地球規模の現象に関連するものであるかどうかにかかわらず、将来増加する可能性のあるサプライチェーンの混乱のリスクを最小限に抑える。
2. 不可抗力条項の更新
将来の契約または再契約ために、不可抗力条項のテンプレートを更新し 、世界的パンデミックまたは同様の破壊的な現象が発生した場合の共通の問題に対応できるようにする。
3. 紛争解決条項への特別な注意
紛争解決条項は、貴社の権利の効果的な執行可能性を決定する。例えば、貴社が中国の供給元から無効な不可抗力宣言を受領した場合、中国の裁判所は損害賠償請求を追及する上で最も有利な管轄ではない可能性がある。貴社が供給元でありかつ貴社もまた再供給元に依存する重要な契約の場合、両方の契約に基づくウイルス関連の供給紛争を一つの法的手続きで解決できるような矛盾のない紛争解決条項について、両方の契約で合意することを目指すべきである。SIDLEYの経験豊富な国際紛争解決を専門とする弁護士は、このような堅牢で十分に調整された紛争解決条項を作成し交渉を支援することができる。
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